これまでに経験したことのない事業を進めるとき、これまでの経験が活かせない時ありませんか?ある程度のビジネス経験がある方にとって、この事業はどういった取り組み方が良いのだろうかと、まずは自分の経験から当てはめようとしていきますが、経験のない事業に当てはまる勝ちパターンが見つからない場合が多々あるかと思います。
実際、市場が異なれば当然、競合や自社の立ち位置も変ってきますので、その事業に合わせた戦い方・勝ちパターンを見つける必要が出てきます。加えて、分散型事業の場合には、必ずしも自社の市場シェアが高いほど有利というわけでもなくなり、その地域や立地ごとで顧客に支持されることが重要となります。
このように、その事業で考えるべきことも事業ごとに変化してきますので、この点を理解して進める必要があります。
ここでは、勝ちパターンを考える上で参考になる「アドバンテージ・マトリクス」について紹介していきます。
Contents
「アドバンテージ・マトリクス」とは?
アドバンテージ・マトリクスという言葉は聞きなれないかもしれませんが、名前を覚える必要はありません。アドバンテージ・マトリクスとは、事業特性を把握するためのフレームワークで、業界で競合と戦う際の「手段の多さ」や「優位性の構築しやすさ」を4つのタイプに分類したものです。
その4つとは、
・分散型
・特化型
・手詰まり型
・規模型
となり、競争上の戦略の多さを縦軸、優位性構築の可能性を横軸にとって以下のようにフレームワークで表すことができます。
この内容を読まれている方は、それぞれの枠に入っている4つの分類がイメージできるのではないでしょうか?
このマトリクスによって、その事業の特性を知ることができるため、自社事業の方向性を検討する際に役立てることができます。
4つの事業タイプについて、説明していきます。
分散型事業
分散型事業は、企業の売上に影響なく売り上げを高めることができますが、1つ1つの店舗で大きな売上規模が見込みにくい事業です。カフェやアパレルなどがこれに該当してきます。
この事業の特徴としては、競争する手段が多いことです。手段が多いこともあり、ある程度規模が高まったとしても、競合に勝てているということにはなりにくい反面もあります。
この事業では、提供する商品やサービスそのものが、顧客に支持されることで収益を上げていきます。
特化型事業
特化型事業は、企業の売上規模に影響なく売上規模が拡大できる事業で、専門雑誌や、薬などの業界がこれにあたります。特化型事業も競争する手段は多く、企業の規模も勝因の1つにつながります。ある分野でシェアNo.1になると、他の特価分野も注目を集める可能性がでてきます。
特化型事業では、特定の分野に特化して、競合よりも優位に立ちながら収益を高める戦略が有効となります。
手詰まり型事業
手詰まり型事業では、収益性と売上に関係なくどの事業でも売上げが伸ばしにくい事業です。この事業に該当するのが、先進国でのセメント業界などがあげられます。様々な戦略を駆使しても、他社と差別化することが難しい事業となります。
この事業では、コストを下げて価値のあるものを提供しても、競合も儲からなくなるという特徴があります。
この業界では、成熟期を迎えた分野となり、コスト・品質面での競争力のない企業は徐々に居場所がなくなる事業です。その為、打ち手を考えることが難しくなります。
規模型事業
規模型事業は、収益性と売上規模に明確な関係がみられる事業です。この事業で代表的なのが、車業界です。売上規模を高めると収益が増加していき、規模の経済が働きやすくなる事業です。規模型事業では、デザインなどの価値を高める以上にお客さんが購入してくれる価格で提供する必要があります。
規模型事業では、他社より選ばれるために価格を抑えていく必要があります。
アドバンテージ・マトリクスの活用の仕方
アドバンテージ・マトリクスを活用する上で、基礎情報が必要です。まずは、その業界の以下について把握しましょう。
①業界特性
その業界の事業特性をもとに戦略や方向性を検討していきます。
②自社の事業特性
自社の事業特性を把握して、特化型・規模型事業への移行をしていくようにしましょう。
アドバンテージ・マトリクスのコツ
事業特性を把握するのはもちろんですが、業界の定義を具体的におこなっていくことで、その事業の特性を正確に捉えることができます。
分散型であるから仕方ないと打ち手をあきらめるのではなく、その中で特化型事業に変えることのできるヒントや戦い方を見出していくことが重要です。同じ商品、例えば野菜であっても、それを使ってどんな料理が作れるのか。というレシピをセットに売るだけでも、お客さんにとってのお店の価値は格段と高まります。
また、国や地域によって業界の特性は異なりますので、注意が必要です。
日本では、コンビニエンスストアは、生活に欠かせないものになっていますが、アメリカに行くとコンビニエンスストアの立ち位置も変ってきます。アメリカでは、ウォルマートのような大型店が生活の中心にあるため、戦い方を変える必要がでてきます。
メーカーでの経験を通じて
これまで経験したことのない事業を担当することは多々ありますが、まず初めに市場・競合・自社という3C情報を収集することは必要です。ここがあってこそ、4タイプの内のどの事業タイプであるかを理解することができます。その結果、手詰まり型事業であるとわかれば、市場や戦い方をズラした方向に転換する判断も必要になります。この部分が偏った見方や抜け漏れがあると、打ち手としての話が進むことはありませんので、基礎情報であることは理解しておく必要があります。
この情報収集をせずに、「手間がかかる」や「利益が取れていない」ために事業撤退などの大きな判断をしようとする行為を見かけますが、そこには大きなチャンスが隠れていることもあります。
私が担当していた事業を人に引き継いだ際にあったことですが、年間300万円の開発費や1ヵ月の工数がかかるという点にばかり焦点がいってしまい、年間5,000万円を安定的な利益をうみ出していて、ニッチ市場であるが、市場は伸びている。などの点を見ずに判断されてしまい、後々、撤退を社内で後悔している場面があります。
この様な過ちを犯さないためにも、現状把握をしていきましょう。
そして、何よりも重要なのが、机上だけで判断はしないようにしてください。
サービスや商品、店舗のいずれにしても、そのサービス・商品・お店や地域に行かずには、そのものの良さは理解できません。
ビジネスマンとしての年数が経つにつれて経験だけに頼ってしまいがちですので、この点は、初心を忘れずに取り組みましょう。
まとめ
事業での戦い方を検討する上で、ここで紹介しましたアドバンテージ・マトリクスの4つのタイプの内、どのタイプであるかを理解し、その価値パターンに合わせた戦略を設定する必要があります。どの事業タイプに該当するがを理解するには、市場・競合・自社の3C理解は欠かせません。
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