新規事業を進める必要があるけど、進め方が分からない。技術はあるけど、活用方法が分からない。製造現場に近いほどこういった悩みがあるのではないでしょうか?今ある商品が成熟に入っていると感じた時に考える技術転用での新事業の進め方について紹介します。
Contents
技術活用での新事業テーマ探索・事業企画のプロセス
まずは、プロセスについて説明ですがプロセスについては、大きく「ネタづくり」「事業家判断」「製品化プロセス」の3つに分けられます。
ネタ作りには、ニーズとシーズの2方向の観点があり、事業環境や未来構想や研究、トレンドと言ったニーズ。そして、技術ロードマップやビジョンやSWOTを含めたの自社の大きな流れや情報をもとにしたシーズがベースにあります。
その上での仮説構想となります。仮説構想では、自社のドメイン設定や戦略、商品サービスをユーザーニーズから構想していき、その後に事業計画をおこない、マーケティング活動や製品化活動をする中で経営に貢献していく流れになっています。
ネタづくり
プロセスでは、ニーズとシーズについて触れてきましたが、一般的にはニーズとシーズを考える上でテクノロジー寄りかマーケット寄りか。その場合のリスクを理解しておく必要があります。テクノロジー寄りの場合は実現難易度が高まりますが、競合との差別化しやすくなります。逆に、マーケット寄りで実現性難易度の低いもの場合は競合から追随されるリスクは高まります。
これらは、企業の方針によって異なり、ここ1、2年の短期的には実現性難易度の低いマーケットプルで進め、中期的には技術力の高い商品を販売していこうなどを決められていることが多いです。
事業化判断
事業計画をたてる際は、その事業の目的や背景、環境分析やその内容・目標という前段から実現する条件としての仕組み、課題・リスク、展開シナリオや収支、そして、実行する上で必要な人員・実行計画などが必要となります。
ここでは深く触れませんが、良いビジネスプランには、社会や顧客が持っている課題と自社ならではの観点から、その解決ストーリーを盛り込んだ「シナリオ」と、定性・定量的な観点から実現性と収益性を評価した「シナリオの評価」が欠かせません。
詳しくは、以下のリンクを参照ください。
先の「ネタづくり」の部分では、テクノロジーとマーケットの関係について触れてきましたが、商品を時間軸で見ていくと、2つのS字カーブがあることがわかります。
既存事業における新価値の創出」と「イノベーティブな価値創出」の2段階のS字カーブとなります。この関係と動きについて見ていきます。
既存事業の価値最大化を考える
既存領域で新しいことを考えた場合、伸びはS字カーブでは、以下のようなイメージとなります。
既存事業の中でも、日ごろから模索・工夫をしているかと思いますので、伸びしろを見つけて高める動きは大変難しいことは間違いありませんが、必要なものとなります。
製品ライフサイクル
この伸びしろを見つけて動く時期は「製品ライフサイクル」の、成熟期にあたります。この成熟期では、ユーザー数の拡大や非ユーザーの獲得が課題となります。
更に、この成熟期にユーザー数を拡大するには、2方向での着眼点が必要となります。それが、非利用顧客と非対象顧客まで視野を広げるという点です。この2点に対し、手段を検討していきます。
顧客Mapの活用
顧客を広げるという点で活用できるのが、顧客Mapとなります。ここでは、顧客軸と製品・技術軸の2軸で見ていきます。顧客軸では、既存顧客、顧客拡大、新規顧客という形となり、製品・技術軸でも同様に既存領域、領域拡大、新領域となります。
顧客Mapシートでは、既存技術をすることで顧客を拡げられないか。顧客を広げる為には、どの様な製品・技術が必要かを見ていくためのツールとなります。
勝ちパターンの分析
技術面の深堀として、長期の振り返りからの自社における勝ちパターンの分析も役に立ちます。自社の勝ちパターンは何か?という質問に対し、即回答できる方が多くないのが実態です。勝ちパターンは、自社の経歴に添った3C分析と業績の推移によって分析することができます。
どの時期に、どの様な取り組みを行うことで、勝ちパターンとして成り立っているか。これを理解することで、自社の強みである勝ちパターンを分析することができます。
普段、競合の勝ちパターンまで分析することは多くないかと思いますが、この分析を実施することで、競合の強みも理解できるようになります。
実際に分析する際は、変化に着目することが重要です。
また、競合についても自身で分析することが重要です。競合の商品発売時期や販路、販促の動きについて分析していくことで、自社と競合の強みが理解できるだけでなく、競合が嫌がる打ち手や自社に取り入れられる打ち手が見つかることもあります。
情報を集めることを外部コンサルタント等で実施することできますが、その分析は自社で実施することが重要です。
これまでなぜ勝てたのか?自社の儲けの仕組み
分析を進める中で、自社の儲けの仕組みを理解することができます。収益化の仕組みを理解することで、ビジネスモデルを組み立てやすくなります。
ビジネスモデルでは、価値のつくり方、提供価値、提供方法、ターゲット顧客を理解し、収益化の仕組みを理解が必要となります。
過去~現在の分析 (これからどう戦うのか?)
分析してきた内容から、新たな顧客に対してどのようなビジネスモデルで臨むかを検討していきます。提案できる技術×企画×顧客との組み合わせから自社の強みを活かした戦略を作成します。
また、企画と開発を同期づける為には、ロードマップの活用が欠かせません。ロードマップでは、市場・顧客の動向に対し、商品とそれに要する設計、製造技術となります。ロードマップを作成することで、部門を超えて共通認識で進めることができます。
新たな成長の柱(新規事業)の創出を考える
新たな柱を生み出す際、これまでの成長とは異なる領域をつくることとなります。そのため、今あるヒト・モノ・カネと言ったリソースを分配していくこととなりますが、この新領域の定義を関係者間で共通認識する必要があります。
新領域の設定
事業領域を考える上では、価値と市場の2軸で見ていくと整理できます。それぞれの領域についての説明は、以下の通りです。
①世の中にある市場で既存の提供価値を強化する
⇒性能向上/コストダウンを実施
※この領域は、既存領域です。
②世の中にある市場に新しい提供価値を持ち込む
⇒満たされていないニーズの検索
③世の中にない市場で新しい提供価値を創造する
⇒従来方法に置き換わる一連の方法/システムの構想
②、③が新領域であることの理解が必要です。
成功と失敗の分析
自社だけでなく、他社も含めた過去の挑戦の理解をして検討します。
自社の過去実施した取り組みはもちろんのこと、他社が
・どのような取り組みをしたか
・どのように成功したか
・なぜ撤退したか
という情報は、新事業のテーマを検討する上では知っておくべき情報です。失敗を繰り返すほど無駄な時間はありません。
KSFとは
事業を推進している中で、初期から理解できている課題や成功に繋がる要因が見えてきます。例としてあげられるのが、荒波の中を船で目的地まで進んだ際、どの波を乗り越えたらゴールに近づくか、他の船よりも先にたどり着くためには、帆をどのタイミングで活用すべきか。その帆はどう手に入れるか。というイメージです。
この重要成功要因、主要成功要因をKey Success Factor(KSF)と呼びます。計画をたてていく中で、よりリアルに計画たてていく形となります。
新領域に向けた技術・強みの活用
新規事業で技術活用を検討する上で、注意すべき点が技術シーズの特性に注目するあまり、技術シーズが顧客価値に繋がっていることが重要です。
技術の用途探索の進め方について、説明していきます。
技術展開としての検討する際、以下のようなフローで技術展開を進めます。
これを見て、「商品化アイデアのスクリーニング」と「市場調査」が逆なのではないか?と疑問を持つ方もいますが、技術転用の場合はアイデアを数百~数千個展開した中から、市場での需要性を確認していきます。
まずは、アイデアの数が必要です。この数を10~20個考えて活用できそうにないとあきらめる企業をみてきましたが、1週間で1人1,000個×10名で発散したら、1万個のアイデアが揃います。その上で、アイデアをユーザーである顧客に調査していき、市場性を確認していきます。ここでは深く触れませんが、この市場調査手法もアイデアによりやり方が様々です。
用途探索の中では、アイデアを絞ることも必要ですが、ロードマップでの展開案として持っておくことで、大きく成長させる未来への道筋を描くことができます。
技術の棚卸から商品アイデア発想
一言で技術を活用すると言ってもどの様な視点で技術を見つけていくかが理解できていないと抜け漏れが発生します。保有技術の抽出には以下の見方ができます。
〇製造技術
〇プロセス技術
〇基礎技術
〇知的情報・マネジメント技術
これら全てに関わる特許などがあります。
これらの技術を洗い出した上で、アイデアを発散していきます。
技術視点でアイデア発想をする場合、その機能や性能、特性をどのような顧客価値に変換できるかを思考します。技術のみを考えていてもそれが顧客に必要とされなければ、新事業や新商品にはつながりませんので、顧客視点、且つ市場情報を把握しながらアイデアを発散します。
成長製品調査
技術の活用先が既に市場として確立されている場合は、その市場性を把握することができます。この市場成長性を分析する場合には、市場規模と成長率を2軸に分けてみることができます。当然、市場規模が大きく成長率が高い分野に投下することを検討しますが、自社の強み活用や規模の狙いを理解して選定していきます。
以上のように技術活用での新事業を企画していきます。
また、新事業を提案する際には商品展開シナリオも経営を説得する上で重要な役割となりますので、併せて考えます。
さいごに
最後に、ビジネスモデルを考える上で立案者にしかできないことをお伝えします。ビジネスプランには、今回提案したような論理的な思考は重要ですが、それ以上に想いが不可欠です。信じられるストレッチな目標“成し遂げたい夢”をビジネスプランに盛り込んで経営陣の心を動かしましょう。
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