組織に無くてはならない存在、それは「人」です。
人がいなければ組織は成り立ちません。「当たり前のことを今更?」そう思った方もいるかと思いますが、あなたの組織では、「人」を最大限に活かせていますか?
活かせていないのであれば、その”当たり前のこと”が理解できていないのかもしれません。
成果を出すための「人材マネジメント」について見てきましたが、ここでは「人」のやる気や能力を高める「人事システム」についてみていきます。
Contents
人事システムとは
人事システムの構成要素については以下の4つがあります。
1.採用・配置
どの人材を採用して、どの職務に就かせるか
2.評価
従業員の能力や成果を、どの様な基準で測定して評価するか
3.報酬
貢献に対して、どの様に報酬をしていくか
4.能力開発
従業員が業務遂行するために必要な能力をいかに開発していくか
これらの4つがどの様に、人の「やる気」や「能力」に及ぼしていくかについて、順に見ていきます。
採用・配置
人事システムと言えば、採用や人材の配置という点があげられるかと思います。
人事発表時での配属を見て、「え?この部署に異動?」という驚きの配置を経験された方もいるのではないでしょうか?その際は、あなたの能力が評価されて組織から選ばれたのかもしれません。
人員配置では、戦略遂行に必要な組織能力を明らかにして、あるべき人員と現状とのギャップを解消することを目的としています。
その際、社内・社外から人員を調達する場合があります。
また、余剰人材がいた場合には、希望退職や解雇のような打ち手があります。
この時、人員の調達方法には、社内から選出される場合と社外から調達される場合があります。その違いについてメリット・デメリット、周囲への影響などを見ていきます。
人材調達(外部調達と内部調達の違い)
人材の内部調達と外部調達では、必要な調達コスト(金銭・時間)に違いがあります。
〇外部調達
人材紹介サービスの利用料、採用に関わる人件費、特殊スキル保持者の場合、時間を要する
〇内部調達
異動後の能力開発コスト、組織内での育成に時間を要する
人材評価の精度(外部調達と内部調達の違い)
人材の内部調達と外部調達とでは、採用した人材の制度にも違いがあります。
〇外部調達
情報が限られるため、精度の担保が難しく、不適切な人材を調達した場合、育成や再調達が必要となります。
〇内部調達
情報が豊富なため、精度が担保されやすい
従業員への影響(外部調達と内部調達の違い)
更に、所属している従業員の意識にも、外部調達と内部調達とで違いがありますので、触れておきます。
〇外部調達
労働意欲や士気に影響が出る。組織活性化が期待できる。
〇内部調達
昇格等による期待感が高まる。組織のマンネリ化の恐れがある。
採用や配置での、外部調達、内部調達のメリットとデメリットについて見てきました。それぞれの良さがありますので、その特性を理解して手段を選択する必要があります。
また、人員配置では、将来を担う人材育成視点を忘れずに行うことを忘れずに進める必要があります。人員配置の変更は、他の従業員に対するメッセージも含んでしますので、その点も留意しておきましょう。
評価
続いて、評価システムについて見ていきます。
評価システムは、従業員の能力や成果を、どの様な基準で測定して評価するか。という点を定めたものとなります。
期初に設定した評価シートや期末に提示する自己評価シートの内容について、疑問を持つことがあるかと思います。「こんな評価シートだけで評価できるのだろうか?」という声を聞いたことや目の当たりにしたこと。または、ご自身が感じたことがあるのではないでしょうか?
ここでは、評価の目的から見ていきたいと思います。
評価の目的
評価制度は、他の人事システムで活用すること。そして、フィードバックを通じてコミュニケーションを取りながら従業員を期待する方向に導くことです。
目的① 情報提供
評価情報を他の人事システムである、人員配置、能力開発、報酬に活用することにあります。
各人の強みや弱みを把握するためとなります。
目的② コミュニケーション
評価結果を企業戦略に企業戦略と関連付けてフィードバックすることで、従業員を期待する方向に導くことがあります。
評価をする為には、誰が、何を、どのようにするかという方法も大事な点ですので、触れておきたいと思います。
誰が評価するか:通常は上司がおこなう
どのくらいの期間で評価するか:結果が出る程度の期間をおいての実施(半年に1回程度)何を評価するか:実績、能力、態度
上記、評価の内、「何を評価するか」が気になるかと思いますので、細かく説明しておきます。
何を評価するか
一般的に、以下のような点で評価されています。
〇実績
仕事の成果を定量的に評価します。(販売額、開発件数など)
〇能力
仕事を遂行するための能力(企画力、統率力など)
〇仕事に対する姿勢・態度(熱意、協調性など)
企業によっては、これらを組み合わせた項目で評価をしていますが、何を、どのように評価するかは、従業員の行動やモチベーションに影響を与えますので、評価項目を明確にしておく必要があります。
そして、企業戦略との整合性が取れていることが重要となります。
続いて、評価する側が気を付けるべき点を見ていきます。
評価のコツ・注意点
評価の誤差や偏りをできるだけ少なくす
1つの評価が良いことで、その評価に引っ張られるようなつけ方(ハロー効果)や、5段階評価で差をつけずに中央に付けてしまいがちな傾向などには注意が必要です。
被評価者の理解を得ること
被評価者にも納得がいくプロセスかを考え、結果の伝え方へも配慮が必要です。結果がネガティブな場合、何を期待しているのか、具体的にどのような行動が必要かという点まで説明する必要があります。
評価は、人が行うことですので、人による差は必ず生じます。
そのため、評価者は、コミュニケーションを意識し、ハロー効果や差をつけないという傾向には気をつけて被評価者の理解を得ながらおこなう必要があります。
報酬
報酬システムでは、従業員の貢献に対して「どの様におこなっているのか」を説明していきます。
同期や同世代とは、給料や賞与での比較はどうしてもしてしまうものです。報酬は、わかりやすい形での企業・周囲からの評価でもあります。
まず、知っておくべき点として報酬には、以下の2種類あります。
〇金銭的報酬
賃金、賞与、福利厚生など
〇非金銭的報酬
自己実現の機会や他社からの評価、承認など
報酬は、従業員にとっては生活を支えるものであります。そして、企業にとっては、士気を高めるものでもあります。
金銭的報酬について、詳細を説明していきます。
報酬の基本要素
〇報酬基準
何に対して報酬を支払うか(能力、職務、年齢、業務の成果など)
〇報酬水準
誰にいくら報酬を支払うか(「外部競争力」と「内部公平性」)
〇報酬項目
どのように報酬を支払うか(最適な報酬のミックスは何か)
この様に、報酬には、主に3つの要素がありますが、報酬と聞くと「報酬項目」が頭に浮かぶかと思いますので、この点について細かく説明しておきます。
報酬項目の種類
固定現金給与
年間を通して固定的に支払われる報酬です。ここには、基本給、能力給、各種手当などがあります
インセンティブ
個人の成果や組織の業績に応じて支払われる報酬です。業績連動の賞与や、中長期的に確保したい人材に対してストック・オプションとして支払う額を高めるなどがあります。
ベネフィット
企業に所属していることによって得られる特典です。ベネフィットには、退職金、年金積立、社宅・独身寮などがあります。
同僚や同世代と比較したくなる気持ちもありますが、会社が違えば、報酬の得方も異なります。更に、同じ会社であっても周囲の評価と給与や賞与とは連動していない場合もあります。この点を理解すると、一概に比較するものではないということがわかります。
能力開発
能力開発システムは、従業員が遂行するために必要な能力をどの様に開発していくかが課題となります。
新人研修は、多くの会社で行われているイメージがありますが、それ以外の研修を行っている企業は多くないようにも思います。
ここでは、能力開発の目的から見ていきます。
能力開発の目的
能力開発システムの目的は、企業戦略遂行に必要な業務を遂行できる人材を育成することで、求める人員構成を実現することにあります。この人員により、競合優位性や、企業としての独自性にも繋がってきます。
ここでは、人員が企業の競争優位の源泉となる個人や組織の知識を確立するための「戦略的投資」であると理解することが必要です。
続いて、開発すべき能力の分野について、分類を見ていきましょう。
能力の分類例
大きく分けて、「一般的能力」と「企業特殊能力」に分けることができます。
<一般能力とは>
・どの企業でも役立つ能力
・意識的に教育することが可能なもの
例)ビジネスマナー、論理的能力など
<企業特殊能力>
・特定の企業でのみ役立つ能力
・その組織で仕事をする中で習得されるもの
例)設計・デザイン能力、商品知識など
その他、ハーバード大学のロバート・カッツ教授による3つのマネジャーの能力も有名です。
能力開発の方法を、どの様にしていくべきか。
続いては、この点について、見ていきます。
能力開発の枠組み
能力開発は、誰に、何を、どの様にすべきか。
この点を悩む企業は多いかと思います。
一般的には、以下のような取り組みの考え方があります。
この様に、教育には様々な手段がありますが、どの方法が効果的か。
より、効果的な方法を選択したいというのは、当然だと思いますので、この点についても、触れておきます。
効果的な能力開発方法
リーダーシップ研修の実施機関のアメリカのロミンガー社によると、経営人材に成長する為に有効だった過去の出来事は、以下のような結果になっています。
仕事上の経験:70%
他者から受けた薫陶(くんとう):20%
研修:10%
となっています。
数字だけを見ると、研修は不要では?と感じる方もいるかと思いますが、普段の仕事の中で研修は10%も行っていないはずです。
それなのに、10%もの割合があるというのは、研修1回当たりのインパクトが大きいということが言えます。
実際に、ご自身が受けた研修を思い出してみてください。「あの研修、よかったな」と感じる場が思い当たるのではないでしょうか?
ここまで、能力開発について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
能力開発を効果的におこなうための参考になればと思います。
人材システムは、人事戦略から成る「組織設計」
人材マネジメントと組織構造の関係を理解することで、企業の目標を達成に近づきます。
組織構造の立ち位置について、以下で確認しておきましょう。人事システムと組織構造は並列にあり、人事戦略によって変わってきます。ここでは、組織設計とは、どの様なものであるかという点から見ていきます。
組織設計とは
組織設計とは、企業戦略を遂行するために、「個々の業務をどの様に組合せ」、「どのように行うか」を決定することです。
組織設計と聞くと、組織図や部門、人員配置はイメージしやすいですが、業務プロセスや意思決定プロセスなどの動的な意思決定プロセスも組織設計に含まれます。
ここでは、人材システムについて見てきました。人材マネジメントとして社員の「やる気」や「能力」を高める仕組みではありますが、これらは人事戦略から成っています。
組織で学び、個々の力を最大化できるよう、経営戦略とその仕組みを理解しておきましょう。
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