SWOT分析ってどんな時に実際使っているのでしょうか?
言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。マーケティングの書籍などを見るとよく書かれている分析フレームワークです。ここでは、SWOT分析とは何かを解説しながら、実際にはどんなシーンで使われているのか、また何に注意する必要があるのかを説明していきたいと思います。
Contents
「SWOT分析(読み方:スウォット)」とは何か?
SWOT分析は、企業を取り巻くビジネス環境を分析するためのフレームワークになります。
S(Strengths) :強み
W(Weaknesses) :弱み
O(Opportuniteis) :機会
T(Threats) :脅威
のそれぞれの頭文字を取っています。
下図を見てください。SWOT分析はリソース(ヒト・モノ・カネ)、バリューチェーンといった「内部要因」、マクロ環境や業界環境、市場環境、他社競合といった「外部要因」、またそれぞれにおいて好ましい状況であるポジティブ(強み・機会)とその反対のネガティブ(弱み・脅威)で整理することができます。
SWOT分析は事業の成功要因(KSF)や、事業機会を導き出して自社の事業環境を整理することに役立てることができるフレームワークです。
機会(Opportunities)と脅威(Threats)のポイント
外部要因の、機会と脅威についてみていきます。
外部要因は社外(自社を取り巻くビジネス環境)のことになります。まずは、マクロ環境を把握するためPEST分析(別投稿参照)をします。例えば、規制緩和はどうか?景気動向は?人口動態は?技術革新は?などの観点で、自社のビジネスに影響を与える要素を取り出します。さらに、市場・顧客分析によって自社の製品やサービスを購入頂ける顧客を把握し、競合分析では競争相手を把握します。そして、業界分析では「5つの力分析(別投稿参照)」などで業界の構造をつかみます。
このようにして、何が事業の成功要因かをしっかり検討する必要があります。外部要因の分析から自社のビジネス機会においてポジティブ、ネガティブの要因になるのかを把握しましょう。
強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)のポイント
次は、内部要因の強みと弱みについてみていきます。
内部要因は社内です。リソース(ヒト・モノ・カネ)やバリューチェーンといったものです。内部要因の分析は競合との比較をします。開発力はどうか?シェアは?ブランド力は?事業ポートフォリオは?海外での展開は?といった要素について自社の強み・弱みを分析し、自社の中核の強みを見極めます。
そして、先ほどの機会と脅威に対して自社の強みを活かしてどのように弱みを克服すれば良いかを検討します。事業のKSFと自社の強みがあっていない場合は、KSFを変えるために外部環境に働きかけたり、強みを変えてKSFに合うようにする必要があります。
このように自社の強み・弱みを把握することで打ち手を検討していくことができます。
SWOT分析の事例
SWOT分析ではどのようなことを実際に把握していくのか、ある製造業の例を示したいと思います。下図を参照しながら読んでください。
まず自社の強みと弱みを分析します。自社の強みを分析するときは他社競合と比較しながらら行うのが分かりやすいです。自社の開発力はどうなのか?他社より技術力の高い人材を多く保有している。自社のブランドは顧客にどう評価されているのか?顧客品質には信頼性が高い。など、ヒト・モノ・カネやバリューチェーンで自問自答しながら分析を進めます。そこで出てくる他社と比較したときにネガティブな要素が弱みになります。他社と比較すると海外売上の比率が低く、海外進出が遅れている。さらには他社より営業力が低い。などが分析されたりします。
また、次は自社に影響を与える外部環境を機会なのか脅威なのかという視点で分析します。自社の事業の海外マーケーットを見ると、海外市場規模が拡大。また、国内の需要は増加している、などの外部環境を把握します。その反対の脅威として、原材料が高騰していて利益を圧迫しているな、であったり、自社の客先の業績が低迷しているな、など自社を取り巻く環境を分析します。
「クロスSWOT分析」について
SWOT分析の発展で「クロスSWOT分析」があります。これは、SWOT分析から得られた項目から特に重要なものを抜き出して対策を検討するものです。
下図のように、縦軸に外部要因の機会と脅威を、横軸に内部要因の強みと弱みをとってマトリクスを作成します。それぞれのカテゴリーの掛け合わせから方策を導いていきます。
強み×機会=積極攻勢 (強みを活かして機会を勝ち取る方策を立てる)
弱み×機会=弱点強化 (弱みを克服して機会をつかむ方策を立てる)
強み×脅威=差別化 (他社にとっての脅威を自社の強みで差別化する方策を立てる)
弱み×脅威=防衛/撤退(最悪の事態にならないようにリスク回避する方策を立てる)
先程の事例を元にクロスSWOT分析を見たいと思います。下図を参照しながら読んでください。例えば強み①技術力の高い人材を多数保有している×機会A海外市場規模が拡大しているという事象を捉えて、①×A:技術者を派遣して海外進出をしてはどうか(積極攻勢)という方策が導かれます。このように、縦軸の項目と横軸の項目をクロスしたときに考え得る方策を考えていくのがクロスSWOT分析です。例えば、もうひとつ弱み③海外進出が遅れている×C原材料が高騰という事象を捉えて、③×C:海外調達先の開拓を進める(防衛/撤退)という方策が導かれます。このようにして、それぞれの事象をクロスして方策を考えるのがクロスSWOT分析です。
SWOT分析のコツ
SWOT分析のコツは、ポジティブにとらえて分析することも必要だということです。
つまり弱みを強みに捉えたり、脅威を機会に捉えてみるということです。これは読み解き方によっては、逆の解釈ができるということで、事象の言葉だけを単純に捉えるのではなくネガティブな要素をポジティブに捉えたらどうかという視点を持つことが重要です。
また、分析するときはあらゆることを書き出すということではなく、特に重要なものを選んで取り出すという大胆さやセンスも必要になります。各項目を書き出した後は、影響度の高さという視点でそれぞれを見るようにしましょう。
メーカーでの経験を通じて
メーカーにおいてSWOT分析をする機会が多いかと聞かれれば、そんなことはなく少ないです。日常の企画開発のときに出る内容というよりは、事業戦略や新しい領域の商品にチャレンジするときなど戦略構築フェーズにおいて使います。
自社がそのチャレンジをするのに十分な環境なのか、さらに勝ち目を増やすための方策はないのか、または弱点があるのであればそれを克服しておいて成功確率をあげるなど、外部および内部の環境を捉えて事業の成功要因(KSF)や、事業機会を導き出していきます。
正直コツでも話しましたが、項目を出そうと思えば粒度は置いておくと色々な内容が出てくると思います。その次の作業がとても重要です。その中からどの内容を抜き出すべきか、どの内容をさらに詳細に把握して方策を考えるべきなのか、これはどれだけ事業環境を詳しく知っているか、または戦略構築の経験なども大きく左右してきます。センスも磨きましょう。
まとめ
SWOT分析は、3C分析・PEST分析・5つの力分析と並んで、事業機会を見つけるためには非常に重要な分析フレームワークです。
内容を理解しながら使いこなせるようになるまでには、経験値も必要です。周囲の人の分析内容を見て、自分であればどのような方策を考えるかなど、常にセンスを磨く思考をしていくことで使いこなせるようになります。
また、使いこなせたからと言って正しい答えが必ず出るわけではありません。これだけ不確実性の高い世の中ですから、あくまでもこれらは考えを整理するためのフレームワークです。ゴールは事業の成功要因や事業機会を見つけることです。それを理解した上で、思考を整理するツールとして使うという意識で捉えてもらえればと思います。
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