戦略・マーケティング

「ポーターの3つの基本戦略」とは?

メーカーでモノづくりをしていると競合の戦略を分析するとき、または自社の戦略の方向性を検討するときに、ポーターの3つの基本戦略は良く出てきます。「ポーターの3つの基本戦略」という言葉ではなく、後程説明する3つの戦略のそれぞれの名称がよく出てきます。それぞれの戦略の詳細を理解して、戦略を議論する際のベースの知識をつけて頂ければと思います。

 

Contents

「ポーターの3つの基本戦略」とは何か?

 

ポーターの3つの基本戦略は、
戦略の方向性を検討するためのフレームワークです。
この理論では、企業が競争優位を築くためには3つの基本戦略のパターンがあるとしています。下図を参照してください。

1つめは、コスト面で競争優位を示す「コスト・リーダーシップ戦略」
2つめは、低コストではなく独自の付加価値を提供することで差別化する「差別化戦略」
3つめは、幅広いターゲットを狙うのではなく狭いターゲットに特化する「集中戦略」
となっています。

3つの基本戦略を示すフレームワークでは、横軸に競争優位の源泉を低コストと差別化で区切り、縦軸に競争の範囲を広いターゲットか狭いターゲットかで区切ります。

この3つの基本戦略は、経営環境分析を踏まえて自社が取るべき戦略の方向性を検討するときに使います。また、自社の戦略がどっちつかずの戦略になっていないかを確認するとき、さらには競合の戦略の方向性を理解するときに使うことができます。

 

「ポーターの3つの基本戦略」の詳細と例

 

① コスト・リーダーシップ戦略

幅広いターゲットを狙いつつ、コスト面で競争相手に勝とうとする戦略です。規模の経済性や経験曲線を通じて、最も低コストを実現している業界ナンバー1の企業がこの戦略を実行していることが多いです。

例えば、ファストフードや家電量販店のナンバー1企業がイメージしやすいかもしれません。コスト・リーダーシップ戦略で成功するためには、業界をリードする規模をもつこと、競合より大きな生産量を確保することです。

しかし、負けるリスクもあります。例えば、競合が新しい大量生産方法を見出した場合、低価格だけでは顧客がひきつけられないほど差別化で負けた場合、コスト集中戦略に負けた場合などがあります。このように、コスト・リーダーシップ戦略とは、同じ商品やサービスを提供するのであれば一番低コストで提供できるほうが勝つという考え方になっています。

② 差別化戦略

幅広いターゲットを狙いつつも、低コストではなく独自の付加価値を提供することで競合との差別化を目指す戦略です。付加価値は、例えば製品性能・独自技術・品揃え・流通チャネル・顧客サービスなどがあります。コストでトップになれない企業はほとんどがこの戦略を行っています。

また、コストでトップを狙わずはじめからこの戦略を取る企業も多いです。差別化で成功するためには、顧客にとって価値が認められ競合が簡単に真似できないようにすることです。

しかし、負けるリスクもあります。例えば、商品やサービスが真似された場合、顧客のニーズを失った場合、同じような商品やサービスなのにコストがかかりすぎた場合、競合が差別化集中戦略を実現する場合などです。このように、差別化戦略とは、コストは高くてもそれ以上に顧客が対価を払いたくなるような付加価値を提供できれば勝てるという考え方になっています。

③ 集中戦略

集中戦略は切り口が異なり、狭いターゲットに経営資源であるヒト・モノ・カネを集中して局所的なナンバー1を狙う戦略です。ニッチ戦略と言われたりもします。狭いターゲットとは、例えば地域軸・顧客軸・製品軸などで特定されます。

集中戦略は、競争優位の源泉によってコスト集中と差別化集中に分けることができます。コスト集中は、特定の市場でコスト優位に立ち競合に勝つ戦略です。差別化集中は、特定の市場で差別化して優位に立ち競合に勝つ戦略です。集中戦略で勝つためには、ターゲットとなる市場を絞り込み、その市場で自社の強みを活かして競合と比較して持続的に優位なポジションを築くことです。

しかし、負けるリスクもあります。例えば、市場がなくなるまたは小さくなる場合、市場がより細分化されてしまった場合、絞り込むメリットよりも規模のメリットが大きくなり競合がコスト・リーダーシップ戦略や差別化戦略を実現してしまうといった場合です。このように、競争の範囲が狭いターゲットに絞って経営資源を集中投入して勝つという考え方になっています。

 

 

「ポーターの3つの基本戦略」のコツ

 

●ある戦略が有効であっても経営環境が変われば有効性を失うことがあるということを知っておく

例えば、差別化戦略を取っていたとしても技術進歩により差別化が弱まっていくことがあります。常に具体的な競合と自社の強みを意識して、顧客に価値がありかつ競合と違う戦略を取ることが重要です。

 

●ある戦略をとったからといって、他の戦略をなおざりにしてはいけない

例えば、差別化戦略をとったとしても企業努力としてのコストダウンはある程度必要です。そうしないと市場での競争力は保つことができません。

 

●コスト・リーダーシップと差別化の両立は難しいが検討はするべき

ポーターは、コスト・リーダーシップ戦略と差別化戦略の両立は難しいためどちらかに明確に絞るほうが良いと言っています。しかし、この両立が絶対にできないと決まっているわけではありません。両立は難しいもののだからこそ両立できたときには圧倒的なポジションを得ることも可能になります。

 

メーカーでの経験を通じて

 

メーカーで戦略を考えるうえでこの3つの基本戦略を知ることはとても大切です。様々な事業を展開している企業であれば、自社が置かれている状況や競合環境もそれぞれで異なるため、それぞれの事業で戦略を策定していく必要があります。こっちの事業では、コスト・リーダーシップ戦略をはかるが、あっちの事業では差別化戦略をはかるということがあります。よって、戦略を分析する際には、どの粒度で検討すべきなのかをまずは明確にすることが大事です。

さらに、世の中の環境変化はとても激しいです。コスト・リーダーシップ戦略で市場ナンバー1企業であっても、環境要因(例えば技術革新など)で構造が変わってしまい優位性を保てなくなることがあります。3つの基本戦略は分かりやすく、分けていますが実際にはきっぱり分かれているわけではなく、ナンバー1企業でコスト・リーダーシップ戦略をはかりながらも、環境変化や競合環境を見極めて差別化できる商品を展開したり、差別化戦略で付加価値の高い商品を展開しながらその商品が規模の経済性を働かせるようにつまり低コスト化できるように戦略は練っていく必要があったりします。その戦略にあぐらをかくことなく、常に戦略をアップデートしていく意識がメーカーで戦略を遂行していくうえでは大切です。

 

まとめ

 

ポーターの3つの基本戦略は、企業で戦略を立案・遂行していく上で基本となるとても大切な考え方です。基本を知った上で、自社および他社の戦略の状況を丁寧に把握するようにしましょう。

他社の戦略の把握はどうやってするのか?ですが、それは商品やサービスを見て自社や業界内で比較すると一目瞭然です。製品を見て、圧倒的な低コストを実現しているのか、差別化をはかろうとしているのか、はたまたターゲットを絞り切っているのか、その企業の製品を見て分析するだけでどんどん分かってきます。

製品を通じて、どんな戦略をはかっているのか仮説を立てて、かつこの3つの基本戦略を知って、分析できるようにしましょう。

 

 

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