戦略・マーケティング

ブランド・エクイティとは?フレームワークや評価方法を解説

ブランドという言葉は皆さんよく耳にすると思います。ここでは、企業のブランド価値を理解するための「ブランド・エクイティ」について書きたいと思います。ブランド・エクイティとは何のことか、そしてなぜそれが重要なのか、さらにはブランド・エクイティを評価するにはどのようにすれば良いかなどを説明していきたいと思います。

 

Contents

「ブランド・エクイティ」とは何か?

 

ブランド・エクイティとは何のことでしょうか?
それは、「ブランドの持つ資産的な価値のこと」を指しています。企業にとって、ブランドは重要な資産ですよね。その資産がどのような要素で構成されているのかを示したのが、ブランド・エクイティのフレームワークです。ブランド・エクイティは4つの要素に分けられることができます。下図を参照ください。


① ブランド認知
② 知覚品質
③ ブランド・ロイヤルティ
④ ブランド連想

これら4つが組み合わさることで、ブランド・エクイティはブランド自体の力を示します

 

「ブランド・エクイティ」がなぜ重要か?

 

ブランド・エクイティが、なぜ重要になってきたのか背景を書きたいと思います。
今まで企業の資産としては、「有形資産」(現金、設備、備品等)が重視されていました。これらの資産は資本として財務諸表に記載され、また現在の財務状況を表すものとして管理されていました。

しかし、1990年以降は「無形資産」(ブランド、社員スキル等)が注目されるようになりました。目に見えなくても企業の競争力の源泉になります。これらの資産は財務諸表にはのらないものの、長期的な企業価値を生み出す資産として注目されました。ブランドはまさにこの無形資産であり、企業の重要な資産として捉えられるようになったという背景があります。

 

「ブランド・エクイティ」4つの要素

①ブランド認知

ブランド認知とは、そのブランドが商品やサービスの中でどの程度知られているかになります。ブランド認知には2つの種類があります。1つはブランド再認と言い、ロゴや名前などからブランドを思い出す状態です。もう1つは、ブランド再生と言い、ロゴや名前などが無くてもそのブランドを思い出す状態です。このようなブランド認知は、そのブランドの商品やサービスが何かを正しく理解している人がどの程度いるのかの指標になります。

②知覚品質

知覚品質とは、あるブランドを消費者が見て知覚できる品質や優位性のことになります。この知覚品質を通じて、そのブランドがどのくらい「品質が良く、試してみたい」と思われているかが分かります。消費者は商品やサービスを性能・信頼性・耐久性・アフターサービスなどの面から比較や検討をします。これらの品質が高いブランドほど購入する可能性が高まります。

注意したいのは、同じ消費者でも用途やシーンによって、ブランドの価値は変わります。同じ消費者が、あるシーンでは信頼性を重視し、別のシーンでは耐久性を重視することがあります。また、実際に品質が優れていても、それが必ず知覚されているとは限りません。そのため、ブランドの品質がどのくらい優れているかを分かりやすく伝える努力が必要になります。

このようなコミュニケーションを通じて消費者にブランドの品質が伝わることで、はじめてブランドに知覚品質が生まれます。消費者は知覚品質を通じて商品やサービスの品質を知り、真剣に購入を検討したり、一度購入してみるということにつながります。

③ブランド・ロイヤルティ

ブランド・ロイヤルティが生まれることで顧客がそのブランドの商品やサービスを好んでいる状態になり、そのブランドを継続的に購入したいと考えるようになります。ロイヤルティが高いほど、顧客は他のブランドに切り替えにくくなりますので、企業は安定した収益をあげることができます。

しかし、ブランド・ロイヤルティはリピート率だけでは判断できません。例えばリピート購入の理由が、競合にはなかっただけということがあります。重要なことは、競合が表れても変わらずそのブランドを選ぶかを見ることで、ブランド・ロイヤルティがあることを判別することです。ブランド・ロイヤルティがあるということは、顧客が自発的にブランドに対して愛着心を持っている状況ということができます。

④ブランド連想

ブランド連想とは、そのブランドに関して顧客が連想しても大丈夫な範囲のことを指します。注意しないといけない点は、ブランド連想とはブランドの名前から連想されるもの全てではないということです。自社のブランドから連想させたいものと、本来ブランドとは無関係なものであっても連想されてしまうものとは区別する必要があります。それができないと、ブランド連想の範囲を越えた製品やサービスが、ブランドを毀損してしまう可能性があります。ブランド連想を明確にすることで、ブランドの範囲を規定することが重要です。

 

「ブランド・エクイティ」の評価方法

 

先程の4つの要素をどのように評価すればいいのでしょうか。

ここでは、3つの方法を紹介します。

① コスト・アプローチ

ブランドの構築にかかった費用の総額からブランド価値を測定する方法です

② キャッシュフロー・アプローチ

ブランドが将来生み出すキャッシュの金額を予測して、現在価値に割り戻して評価する方法です。

③ マーケット・アプローチ

市場の類似のブランド価格と比較して、ブランドの価値をはかる方法です。

大事なことは、ブランド・エクイティをはかるときには1つだけの方法に頼らず複数の評価を実施することです。それによって、より正確にブランド・エクイティを評価することができます。

 

「ブランド・エクイティ」のコツ

 

●ブランドの価値を伝える努力が一番重要

どれだけ素晴らしい価値の商品やサービスでも顧客に伝わらなければ、ブランド・エクイティは向上しません。

●ブランド・エクイティは可能な限り定量化する

目に見えない無形資産であるからこそ、きちんと目指す指標を設定して、定点観測することが有効です。

●ブランド・エクイティを考える視点は様々

4つの視点を紹介しましたが、それ以外の視点も日々模索されていることを認識しておきましょう。

ブランド・エクイティは企業のブランドを考える上で不可欠な考え方です。これを通じて、長期的な顧客との関係性を築いていくことが重要です。

 

メーカーでの経験を通じて

 

メーカーにとって、ブランドは命でもあります。ブランドと一言に言っても企業ブランド・カテゴリーブランド・商品ブランドとあります。それぞれの役割は違いますが、企業にとってそれぞれのブランドをどう育てていくか、企画であれ開発であれ広報であれとても重要なことです。

メーカーにとって商品がはじめて売れることはもちろん嬉しいことですが、その顧客が一度その商品を使ってまた使いたいとリピートしてくれることが何より大事なことです。リピートされてはじめて売れたと思わないといけません。そして、そのリピートを生んでいく中で大事なのがブランドです。ブランド・ロイヤルティが高まれば、コミュニケーション不要でリピートをしていってくれます。これが、ブランドの価値です。

しかし、ブランドについては有形ではなく無形のため、捉えることが非常に難しいです。そのため、このブランド・エクイティの4つの要素を考えたり、評価をして定量化して競合との比較や自社の認識をすることがとても大切になります。どこに課題があるのかを明確にしたうえで、顧客とのコミュニケーションを取らないと、ブランド価値を高めていくことができません。この考え方を知り、自社の無形資産の価値であるブランドを育てていきましょう。

 

まとめ

 

メーカーでブランドを考えることは非常に難しいことです。僕自身も日々悩んでいます。顧客とよりよくコミュニケーションを取るための最善のブランドの打ち出し方を常に考えています。この打ち出し方自体は無数のやり方があると思います。どれが正解なのかは分かりませんが、打ち出したブランドに対して、ブランド・エクイティという考え方を知り、きちんと定量的に評価することで客観的な評価をすることができます。自社よがりのブランド評価ではなく、きちんと顧客目線で客観視することがブランドを育て、価値を高めていくことにつながります。

 

 

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